豚を育てて走らせるゲーム、ダービーブタリオンを作っています。
作っていて一番時間を使ったのは、機能を足すところではありませんでした。どこまで分かるようにして、どこから先を分からないままにしておくか。その線をどこに引くかで、遊んだときの手応えがまるで変わってしまう。そのことに、作りながら何度も気づかされました。
今日はその線引きの話を、5つ書きます。
1. 素質は、最後まで数字にしない
豚には「素質」があります。どこまで強くなれるかの上限です。これを数字では表示しないことにしました。
数字が見えると、遊びが変わってしまうからです。上限が分かるなら、市場で良い数字を探して、出るまでやり直すのが一番効率のいい遊び方になります。でもそれは、豚を育てる時間ではなくなってしまう。
だから、調教の伸び方から読んでもらう形にしました。「今週はよく伸びたな」「そろそろ頭打ちかもしれない」と、手応えで測る。当たっているかどうかは、走らせてみるまで分かりません。この分からなさが、育てているという感覚そのものだと思っています。
2. 仔が生まれるまで、一年かかります
種付けから誕生まで48週、ゲーム内の1年です。
短くする案は何度も考えました。テンポは確実に良くなります。それでも一年のままにしたのは、待つ時間があってはじめて、繁殖が「市場で買う」とは違うものになるからです。
買った豚は、その日から自分の豚です。仔は違います。一年前の自分が選んだ組み合わせの答えが、いま届く。期待どおりでも、期待外れでも、そこには一年ぶんの自分の判断が乗っています。その重さは、待たないと生まれませんでした。
3. 引退まで持った豚が、血を残します
繁殖に上がれるのは、途中で売らずに、引退まで持った豚だけです。売ってしまった豚を、あとから繁殖に使うことはできません。
育成ゲームでは、伸び悩んだ個体を売って資金にするのが、たいてい一番効率のいい選び方になります。効率がよすぎて、最後まで付き合う理由がなくなってしまう。
そこで、引退まで連れていった豚にだけ、次の世代へ続く道を用意しました。売れば今のお金になる。引退まで持てば血が残る。どちらも正しくて、そのつど悩ましい。その悩みを残しておきたかったという話です。
4. 優れた血は、勝ちやすい。けれど必ずではない
父と母から遺伝子を1つずつ選んで、仔に渡します。このとき優れたほうが選ばれやすくしてあります。ただし、必ず選ばれるわけではありません。両親の平均を取る、という作りにもしていません。
ここは両端を試して決めました。
- 必ず優れたほうが勝つようにすると、数世代で全部が上限に張り付いて、育てる余地がなくなります
- 完全に運任せにすると、どの血を選んでも結果が変わらず、血統表を眺める楽しみが消えます
探していたのは、その間のどこかです。良い血を積めば確かに強くなる。ただし思いどおりにはならない。積み上げが効くのに、結果は約束されない。血統というものの手触りに近いところを、繰り返し走らせながら探しました。
そしてときどき、親を超える仔が生まれます。これがあるから、血を積む意味があります。
5. 公営の種豚を、実績で選ぶ理由
自分の牧場だけでは牡が足りないので、公営の種豚を借りられるようにしました。どの豚が並ぶかの条件を決める必要があります。
選んだのは勝ち星です。走って勝ってきた豚が並びます。実績で種豚を選ぶのは、現実の繁殖でもそうしていることなので、素直な形に落ち着きました。
ここで一つ、条件を決めるたびに確かめていることがあります。1で「数字にしない」と決めたものが、別の画面からうっかり見えてしまわないか。
画面が増えるほど、情報の出口も増えます。ある画面で丁寧に伏せていても、別の一覧の並び方や、どこかの条件の書き方から、答えが透けてしまうことがある。一箇所でも抜けていると、1で作った分からなさが、まるごと台無しになります。
勝ち星はもともと誰でも見られる情報です。だから並んでいても、新しく何かが分かってしまうことはありません。地味な確認ですが、こういうところを毎回踏んでいます。
分からなさが、遊びを作る
5つとも、結局は同じことをしています。分かってしまうと面白さが消えるところを、分からないまま残しました。
この一週間で入れた「出走の2ヶ月前予約」も同じ考えです。予約しておくと、当日を待たずに相手の顔ぶれが読めます。ただし予約しなければ、当日まで分かりません。全部が最初から見えていたら、狙いを立てる楽しみがなくなってしまうからです。
ちなみに、ゲームの系統や配合の考え方は現実の養豚から借りています。血統でものが決まるという点で、豚の世界は馬よりずっと露骨です。そのあたりは資料室にまとめてあります。遊ぶ前に読むと、配合画面の見え方が少し変わるかもしれません。
本作の一部のビジュアルは画像生成AIで制作しています。UI素材には Kenney UI Pack – Adventure(CC0)を使用しています。