こんにちは、歌流茶亭の星海奏です。
クラシック名曲の中身、1曲目はパッヘルベルのカノンです。
結婚式で、卒業式で、街角で、たぶん誰もが聴いたことのある曲だと思います。それでいて、この曲がどういう仕組みでできているかを説明できる人は、そう多くありません。私も今回きちんと数えてみて、はじめて腑に落ちました。
この演奏はサンプリング音源による合成であり、人間の演奏ではありません。 楽譜データを音に変換したものです。
YouTube(4分17秒)
正式な題名は違います
ヨハン・パッヘルベル(1653-1706)はドイツのニュルンベルクに生まれたオルガン奏者で、当時はオルガンの大家として知られた人でした。バッハの兄ヨハン・クリストフの先生でもあります。つまりバッハは、この人の孫弟子にあたります。
「カノン」として親しまれているこの曲、正式には「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」といいます。カノンはその前半で、後ろにジーグという舞曲が続きます。ジーグのほうはほとんど演奏されません。
作曲年ははっきりしていません。1680年ごろとされることが多いのですが、確かな根拠のある数字ではないのです。
そして、この曲は長いあいだ忘れられていました。20世紀に入ってから楽譜が出版され、1968年にジャン=フランソワ・パイヤール指揮の録音が出て、そこから爆発的に広まりました。今のような定番になったのは、この50年ほどのことです。
仕組みは、驚くほど単純です
低音が、2小節のあいだに8つの音を弾きます。ニ・イ・ロ・嬰ヘ・ト・ニ・ト・イ。これを最後まで、ひたすら繰り返します。
その上で、3つのヴァイオリンが同じ旋律を弾きます。ただし2小節ずつずれて入ってくる。1番が弾き始めて2小節後に2番が同じ旋律を追いかけ、さらに2小節後に3番が追いかける。これが「カノン」です。輪唱と同じ仕組みですね。
つまり作曲家が書いたのは、低音8つと、旋律1本だけです。あとは時間をずらして重ねただけ。それで28回ぶんの変化が生まれます。
同じ旋律でも、ずらして重ねると、あるときは3度でぶつかり、あるときは6度で溶け合う。組み合わせが刻々と変わるので、素材は同じなのに響きが変わり続けます。飽きないのはそのためです。
数えてみました
今回使った楽譜(3ヴァイオリン+通奏低音の完全版)を数えると、57小節に1,956音。同時に鳴る音の数は平均2.30声で、最大4声です。音域は38から86までの49音ぶん。
面白いのは発音の分布です。851ある発音点のうち、単音が234、2声が271、3声が204、4声が142。3つのヴァイオリンが順に加わっていくので、曲が進むにつれて厚みが増していく構造が、そのまま数字に出ています。
この録音では、4つの声部をすべてピアノで鳴らしました。本来は弦楽器の曲なので、音の伸びは弦にかないません。ただ、4声が1つの楽器の中で重なると、追いかけっこの構造はかえって見通しよく聞こえます。
余談ですが
実は最初、別の楽譜でこの曲を音にしました。それがどうにも痩せていて、指1本で鍵盤を押しているようにしか聞こえなかったのです。
調べたら、その楽譜にはヴァイオリン1声部しか入っていませんでした。追いかける相手も、土台になる低音も無い状態で、旋律だけが鳴っていたわけです。138個の発音すべてが単音でした。
カノンという曲から、カノンの仕組みを抜くと、こうなるのだなと。差し替えて1,956音になったときの安心感といったらありませんでした。
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パッヘルベルの25年あとに生まれた人の曲です。低音の上に旋律を重ねる構造は同じなのに、片方は静止して、片方は突進します。バロックという同じ括りの中の振れ幅が見えます。
出典
- Wikipedia (English), "Pachelbel's Canon" — https://en.wikipedia.org/wiki/Pachelbel%27s_Canon
- Wikipedia (English), "Johann Pachelbel" — https://en.wikipedia.org/wiki/Johann_Pachelbel
- 楽譜:Mutopia Project(浄書 Michael Fischer v. Mollard、原典 IMSLP)/CC BY 4.0
小節数・音数・音域・同時発音数は、使用した楽譜データから実測した値です。