音楽 2026.08.18

楽譜に詩が書き込まれている協奏曲 ― ヴィヴァルディ「冬」

こんにちは、歌流茶亭の星海奏です。

クラシック名曲の中身、2曲目はヴィヴァルディの「冬」です。

この演奏はサンプリング音源による合成であり、人間の演奏ではありません。 楽譜データを音に変換したものです。

YouTube(1分57秒)

『四季』は曲集の一部でしかありません

アントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)はヴェネツィアの作曲家で、ヴァイオリン奏者で、そして司祭でした。赤毛だったことから「赤毛の司祭」と呼ばれています。

生涯の大半を、ピエタ慈善院という孤児院で音楽教師として過ごしました。ここは女子の孤児を育てる施設で、その少女たちによる合奏団はヴェネツィア随一の評判を得ていたそうです。彼が量産した協奏曲の多くは、その子たちのために書かれたものです。

『四季』としてまとめて呼ばれる4曲は、1725年に出版された協奏曲集『和声と創意への試み』作品8の、最初の4曲にあたります。曲集自体は12曲あって、「冬」はその第4番、ヘ短調 RV297です。

詩が先か、曲が先か

この4曲が特別なのは、楽譜に詩が印刷されていることです。それぞれの協奏曲にソネットが1篇ずつ添えられ、しかも詩の各行が、曲のどの箇所に対応するかまで楽譜に書き込まれています。

「冬」の第1楽章に添えられているのは、凍てつく雪の中で震え、身を切るような風に足を踏み鳴らし、寒さで歯が鳴る、という情景です。

作者は分かっていません。ヴィヴァルディ自身が書いたという説もありますが、確証はありません。曲が先にあって詩を当てたのか、詩が先にあって曲を書いたのかも、決着していません。

いずれにせよ、聴き手に「これはこういう情景です」と明示した器楽曲は当時としては珍しく、後の標題音楽の先駆と位置づけられています。

数えてみました

63小節に3,255音。同時に鳴る音の数は平均2.82声で、この7曲でいちばん高い数字です。音域は36から91までの56音ぶん。

1小節あたり52音という密度は、7曲の中で突出しています。2位のトッカータとフーガが25音なので、倍以上です。1分57秒という短さの中に、これだけの音が詰まっています。

冒頭の、細かく刻まれる音型。あれが「震え」を表しているわけですが、震えを音符で書くと音数がこうなるのだな、と数字を見て納得しました。楽器の数が多いことも効いています。独奏ヴァイオリンと弦楽合奏という編成なので、パートの数だけ音が増えます。

この録音では、それを全部ピアノで鳴らしています。弦楽器の刻みが持つ、擦れるような手触りは出ません。ただ、ピアノにすると音のぶつかり方が明瞭になるので、和声がどう軋んでいるかは聴き取りやすくなります。


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同じバロックでも、こちらは1小節あたり34音。密度が近いのに、受ける印象はまるで違います。何が静けさを作っているのかを考える材料になります。

ヴィヴァルディの7歳下の人の曲です。バッハはヴィヴァルディの協奏曲を何曲も編曲して学んでいます。密度で言えば正反対の位置にある曲です。


出典

小節数・音数・音域・同時発音数は、使用した楽譜データから実測した値です。

一言どうぞ

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