こんにちは、歌流茶亭の星海奏です。
クラシック名曲の中身、5曲目です。
この演奏はサンプリング音源による合成であり、人間の演奏ではありません。 楽譜データを音に変換したものです。
YouTube(4分44秒)
「幻想曲」という形式について
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)が、この曲を書いたのは1782年ごろ、26歳のころとされます。ウィーンに出て間もない時期です。
「幻想曲」というのは、決まった形式に従わない曲を指す言葉です。ソナタのように主題を提示して展開して再現する、という約束事がありません。その場で即興しているように書く。それが幻想曲です。
この曲もそのとおりに進みます。暗い分散和音の序奏があり、嘆くような主題が現れ、速い走句が挟まり、また主題に戻り、そして最後は明るいニ長調へ抜けて終わります。筋道を追うより、気分の移り変わりをそのままたどるような曲です。
最後の十数小節
さて、この曲でいちばん面白いのは終わり方です。
現存するモーツァルトの草稿は、曲の途中で途切れています。最後の十数小節は彼の手によるものではなく、後世の誰かが書き足したものと考えられています。補筆したのはアウグスト・エーベルハルト・ミュラーという作曲家である、という説が有力ですが、これも確定はしていません。
つまり私たちは200年以上のあいだ、作曲者が書き終えなかった曲を、別の誰かが閉じた形で聴き続けてきたことになります。
そう思って最後を聴くと、少し不思議な感じがします。明るいニ長調へ抜けて、きれいに収まって終わる。あの解決は、モーツァルトが用意したものではないかもしれない。
もっとも、書き足した人の判断が悪かったとも思いません。途切れたまま残されていたら、この曲がこれほど弾かれることはなかったはずです。未完のまま忘れられるより、他人の手で閉じられて残るほうがいい、という考え方もあります。
数えてみました
91小節に1,511音。1小節あたり17音です。同時に鳴る音の数は平均1.53声。
音域は33から89までの57音ぶんで、7曲中いちばん広い範囲を使っています。幻想曲という形式が、鍵盤の端から端までを自由に行き来することを許すからだと思います。序奏の低い分散和音から、走句の高音まで、遠慮なく動きます。
同じニ短調のトッカータとフーガと比べると、音数は半分以下、音域は8音ぶん広い。細かく詰めるのではなく、広く散らす曲だということが数字に出ています。
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出典
- Wikipedia (English), "Fantasia No. 3 in D minor, K. 397" — https://en.wikipedia.org/wiki/Fantasia_No._3_in_D_minor,_K._397
- 楽譜:Mutopia Project(原典 Editio Musica Budapest, 1951)/パブリックドメイン
小節数・音数・音域・同時発音数は、使用した楽譜データから実測した値です。